ミントの会10月の集いを開催しました。
当院の患者会「ミントの会」10月の集いを開催しました。
特別講演は及川文江診療放射線技師主任が「マンモグラフィのお話」、増岡秀次院長が「家族性乳がんと遺伝性乳がん」について、浅石和昭理事長による「トリプルネガティブ乳がんの最新情報」の3題。その後、グループ懇談会を行いました。
及川主任は実際のマンモグラフィ画像をもとにMLO(内外斜位方向)撮影とCC(頭尾方向)撮影について説明。乳房を圧迫し、薄くして伸ばすことで「しっかりとした写真が撮れる」と話し「薄くすればするほど、少ない放射線で撮影できるので被ばくも少ない」と撮影方法を分かりやすく紹介しました。同じ患者さんが他院で撮影したマンモグラフィ画像と当院で撮影した画像を比較し、撮影の仕方による違いがよく分かりました。マンモグラフィ検査では痛みを気にする方もいますが、痛みの原因は乳腺の張り、皮膚のつっぱり、装置に体が当たることがありますが、圧迫すればそれだけ良い撮影ができ、石灰化が映るので、それだけいいことがあると話しました。このほか豊胸術とマンモグラフィの話、被ばくの話なども分かりやすく解説し「被ばくのリスクよりも検査を受けることの方が利益が大きい」と結びました。
増岡院長は、米国人で有名女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが乳がんを予防する目的で健康な乳房を切除、再建していたことが話題になり、最近注目を集めている「家族性乳がんと遺伝性乳がん」について解説しました。
「家族性乳がんと遺伝性乳がんが混同されている」とし、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC) は、がん抑制遺伝子であるBRCA1やBRCA2に病的変異があるものと話し、家族性乳がんの中に遺伝性乳がんがあると、乳がんの家族集積性の分類など用いて説明しました。さらにBRCA1の変異とBRCA2の変異の発がんの特徴なども詳しく解説しました。その上で、高リスクの人は1年に1回のマンモグラフィとMRIでスクリーニングが推奨されるとし、25歳から半年ごとの視・触診と、毎年のマンモグラフィ+MRIを勧めていると話しました。
疫学研究に基づいたがんの原因は、喫煙と食事がともに30パーセント、運動不足、職業、ウイルス・細菌がそれぞれ5パーセント、遺伝が5から10パーセントを占め、その他原因が20パーセント(ハーバード大学1996疫学研究より)と紹介。乳がん発症の予防として、生活習慣上は1)低脂肪食と適度な運動、2)1日10杯以上の緑茶、3)大豆食品の摂取(植物性エストロゲン、イソフラボンの効果)を提示。リスクを軽減できる要因に喫煙、アルコール、閉経後の肥満、運動不足を解消することと説明しました。
浅石理事長は、トリプルネガティブ乳がんについてMDアンダーソンセンターの2016年8月報告、再発治療薬(オラパリブ等)、PD-1抗体など最新の話題を提供しました。
トリプルネガティブン乳がんは、全乳がんの10から15パーセントあり、ホルモン受容体(-)HER-2(-)、ホルモン療法や抗HER-2療法の効果はない、術後2年から3年位の早期再発が多いと話し、現在は抗がん剤で治療し、補助化学療法では全く効かないものから抜群に効果のある例までさまざまだが、約50パーセントには効果がみられると概要を述べました。併せてトリプルネガティブサブタイプの分類についても分かりやすく解説しました。
MDアンダーソン報告から、抗がん剤の効果と臨床応用の分類、BRCA遺伝子変異とその治療についての検討、免疫に働きかけるPD-1受容体阻害薬の仕組みなど、最新の治療と現在進んでいる治療方法について解説しました。
当院の患者会「ミントの会」は4月2日、当院2階待合室で「4月の集い」を開催しました。
会員は70人となり、本ホームページをご覧になって入会される方も増えてきています。
講演は「再発進行性乳がんの最新治療」をテーマに、浅石和昭理事長が「乳がん術後治療の現状」、三神俊彦副院長が「乳房再建 どのような方が対象か」、そして当院顧問で蘇春堂形成外科副院長の矢島和宜先生による「再建手術」の3題が行われました。
浅石理事長はこれまで行われてきた乳がん治療の流れ、HER-2陽性乳がんとハーセプチンについて分かりやすく解説。新しい治療として2013年にパージェタ、2014年にカドサイラという薬が登場し、ハーセプチンとパージェタを使った治療で乳がんが進行しない状態が6か月延び、余命が3年延びた人が66%と、治療成績が明らかに向上。現在では二次治療の標準的治療にカドサイラが用いられていることなどを紹介しました。また、閉経前、閉経後のホルモンの仕組みや日本人女性の乳がん患者の70%が該当するER陽性・HER-2陰性の乳がん治療について詳しく説明しました。
再発・進行性乳がんの治療でもアフィニトールとアロマイシンを併用した新しい治療で、他のホルモン剤を用いた治療との無増悪生存期間の差は4.1か月。さらにフェソロデックスとイブランスを併用した治療では同期間が9.2か月延びていると最先端の治療を紹介。浅石理事長は「長く頑張れば頑張るほど良い薬が出てくる」と励ましをおくりました。
三神副院長は乳房温存術の対象となる患者さんは当院の症例でも6割くらいであり、他の医療機関では乳房温存術を行うために無理に抗がん剤で小さくしてから行った時期もあったが、局所再発などの問題があったと、乳がん手術の歴史について述べ、根治を高めるためには乳房をきちんと切除し、乳房再建という選択があることを紹介しました。特に乳房再建術を前提に治療を進めると無理な部分切除をせずに済み、高い根治性が期待できること、術後の乳房に高い整容性があると説明し、乳房温存術では根治性と整容性のバランスが取れない場合に乳房再建術を考えるべきと話しました。
再建には自家組織を使う方法と人工物を使う方法があり、それぞれの適応など説明。これまで保健適用とならなかったことで費用負担が大きかったが、乳房再建用ティシューエキスパンダーおよびシリコンインプラントが承認され、2013年に再建術が保険適応となっています。当院では一次再建と二次再建を行っており、適応は手術前の画像評価を重視。乳房再建手術の方法や再建を前提とした治療の流れ、乳房再建術導入による治療体系の変化などを解説しました。当院で一次再建を受けた患者さんの感想も紹介し、満足感が高いことを話しました。
矢島顧問(蘇春堂形成外科副院長)は2014年3月末まで、全国的に乳房再建で国内の乳がん患者さんから支持されている東京都のがん研有明病院の形成外科副医長として乳房再建を担当し、教育・指導的立場でも最先端治療を行ってきました。この4月からは当院顧問として、外科と形成外科がコラボレーションした治療を提供していきます。これにより、定評をいただいていた乳がん治療から質の高い乳房再建まで、当院で一貫して患者さんに提供できる体制となっています。
全国での経験をもとに、矢島顧問は国内における乳がん手術治療の変遷、乳房温存治療の発展と問題点、乳房温存術から全摘出と再建を組み合わせた治療への流れを説明。乳房再建術が保険診療として認められた際、国は「乳がんに罹患した女性が心身ともにより健常な状態へ復帰するために必要なプロセスである」としており、モチベーションの獲得ときれいに治す整容再建の意義があると話しました。
形成外科医の立場から乳房再建術の流れ、治療費用などを説明。多くの症例を写真を用いて具体的に解説し、大変に分かりやすく、乳房再建への理解が進みました。最後に乳房再建は、今という時間をどう生きていくかが大切、さまざまな要望にも応えることができるので気軽に相談を、とアドバイスしました。
今回の4月の集いでは、参加者から多くの質問があがり、各医師が丁寧にお答えしました。ミントの会では、普段は聞きにくいこと、疑問に思っていたこと、不安に思っていたことなどを気軽に質問でき、有意義な会となっています。ぜひミントの会にご参加ください。