2017.8.31 | ミントの会
8月度「ミントの会」開催しました
「ミントの会」開催しました
当院患者会「ミントの会」8月の集いを8月5日、当院2階ロビーで開催しました。
特別講演は、若年性乳がん体験者コーディネーターで、11月19日に「若年性乳がん体験者のおしゃべりの会 全国キャラバン」in北海道を担当する永井都穂美看護師が「若年性乳がんを体験して」、乳がん看護認定看護師の堀田美紀看護師が「ホルモン療法の副作用対策について」、浅石和昭理事長による「乳がん治療の最新情報」の三題。質疑応答とグループ懇談会を開きました。
永井看護師は、31歳の時に乳がんに罹患。当時お子さんは7歳と4歳でした。2004年から2009年までに乳がん初回登録された109,617症例で、35歳未満は2.7パーセント、2011年に乳がんと診断されたうち、34歳以下は1.8%と、若年性乳がん患者が少ないことをデータを通して紹介しました。若年性乳がんとは一般に34歳以下をさしていますが、妊娠・出産・育児などの生活スタイルから40歳代も含めて言われることもあると話しました。
若年性乳がん特有の悩みとして、結婚や妊娠・出産・育児などが集中してあり、就労やおしゃれも課題になること。そのため、人生設計の変更も余儀なくされ、就労の問題や経済的な問題も大きいと述べました。
乳がん患者に占める若年性乳がん患者は2から4パーセントとされるため、同世代の患者さんと悩みを打ち明けたり、情報交換したり、交流できる場所が少なく孤立感や孤独感を感じやすいと話しました。
自身は「どうしてこんな年齢で、どうして私なのか」「子供たちはどうなってしまうのか」「もう一人子供がほしかったのに」など、見えない不安、将来の人生に対する不安でとてもつらかったことや同世代で周囲に乳がんになった人がいなく、とても辛かったと心境を述べました。
お子さんやご主人の支えに、病気と向き合えるようになった自分がいたこと。若年で乳がんになったことで、その先の人生についてしっかり考えることができ、何となく過ごしていた毎日を、1日1日を大切に過ごしていこうと思えたことはとても大きかった、と得たものがたくさんあったことを紹介しました。
永井看護師は医療食の立場と若年性乳がんの体験者という両側面から、患者さんをサポートしたいとコーチングも学びました。一人一人が前向きに、前進する力を引き出し、サポートするコーチングの学びを、今後役立てていきたいと結びました。
堀田看護師は、ホルモン療法の仕組みについて、乳がんのタイプ、ホルモンの働きなどを通して分かりやすく解説しました。その上で、患者さんが持つホルモン療法のイメージとして「身体への悪影響はないか」「更年期症状は辛くないのか」「太るのか」「妊娠できなくなるのか」「生理が止まる」などの不安があると話しました。
その上で、閉経前のホルモン環境と閉経後のホルモン環境の違いを説明し、抗エストロゲン剤の作用を解説しました。
ホルモン療法の種類としてLH-RHアゴニスト製剤、抗エストロゲン受容体拮抗製剤、アロマターゼ阻害剤を上げ、とそれぞれの副作用を分かりやすく解説しました。
LH-RHアゴニスト製剤と抗エストロゲン受容体拮抗製剤に共通する副作用「ホットフラッシュ」の対応法として、1)体温を調整しやすい服装にする、2)辛いものや香辛料をさける、3)温度・湿度を調整する、4)身体的・精神的ストレスをさける、5)1日30分程度のウォーキングなどの運動をする、と紹介し、骨粗しょう症への対応法、関節症状の対応法など、代表的な副作用への対応方法を説明しました。
前向きに暮らすためにストレスを減らす「健やかかな心作り」が大切と話し、心のセルフケアには睡眠、水分、食事、しゃべること、の4つが有効と紹介。札幌ことに乳腺クリニック患者会「ミントの会」は、患者さん同士が交流し、情報交換や他の人の楽しいことなどを聞いたり、話したりできる場です。一人でも多くの患者さんにミントの会に参加していただき、健やかな暮らしに役立てていただきたいと思います。
浅石理事長は「乳がん治療の最新情報」と題して、癌細胞が発生する仕組みと生体防禦の仕組みについてはじめに説明。生体内に侵入した発癌物質のほとんどが細胞内で代謝され、解毒されたり、死滅したり、変異細胞になることを拒否したりしてDNAに結合するのはわずかであることを示し、DNAに結合した場合も正常細胞による修復が行われていることを解説しました。正常細胞による修復が失敗した場合も生体に重大な変化を及ぼさない遺伝子が約4万種あり、問題になる遺伝子は約200種で、これらにいくつかの変異が同時に発生した時にのみ癌細胞になることをイラストを持ちいて分かりやすく説明しました。
乳がんの基礎知識として、再発と転移、術後の治療について順序立てて解説し、最新の話題であるLiquid Biopsy(リキッドバイオプシー)について話を進めました。
リキッドバイオプシーは採血するだけで腫瘍の進行や治療効果がわかるもので、早期がんのスクリーニングや予後予測にも有効で、微小転移の推測も可能な最新技術です。
中でもバイオマーカーとしてエクソソームが注目されており、「最近の研究で乳がんでは悪性化や転移の手がかりになる情報が含まれていることが分かってきた」と紹介しました。
専門的な研究成果をもとに乳がんとエクソソームの最新情報をできるだけ分かりやすく解説しました。