2015.3.17 | ミントの会
ミントの会 3月の集いを開催しました
札幌ことに乳腺クリニック 患者会「ミントの会」 開催しました
当院の患者会「ミントの会」3月の集いを3月7日、開催しました。
2015年最初のミントの会では、八城亜紀子看護主任が「リンパ浮腫外来現状報告」、増岡秀次副院長から「乳がんの化学療法」、浅石和昭理事長による「乳がん治療の最新情報」の三題の講演がありました。あわせて、乳がん体験者の「体験発表」が一題とグループ懇談会も行いました。
リンパ浮腫外来を担当している八城主任(リンパセラピスト)は、当院で同外来を開設して2年が経過した現状について紹介しました。
乳がんでのリンパ浮腫発症は、治療後数年経ってから発症する例が多いため、経過観察は重要と話し、当院の平成25年3月から同27年2月までのリンパ浮腫外来受診者が22人おり、月平均6.3人が受診(同外来は週1回診療)。継続して通院している人が11人であることなど、現状を説明しました。
治療の実際についても話し「リンパマッサージは複合的理学療法といい、用手的リンパドレナージ(MLD)、MLD後の圧迫、圧迫した上での患肢の運動、患肢の清潔-、の4つを組み合わせたもの」と具体的な治療の実際について解説。
「リンパ郭清を受けた人でも、リンパ浮腫を発症する人としない人がいて、病状や体質による個人差もありうるといわれます。万一、リンパ浮腫になっても、早期発見・治療が有意義となり、セルフケアを基盤とした根気のいる治療になるが、結果は必ずついてくる」と結びました。
「乳がんの化学療法」について講演した増岡副院長は、最初にがんの種類と抗がん剤の効果について説明。舌がんや甲状腺がん、胃がん、食道がんなどに比べ、乳がんは抗がん剤で明らかな延命効果があると述べました。
乳がんの薬物療法は、再発の予防を主な目的として行う「術前・術後補助療法」と、手術ができない遠隔転移に対して延命・症状の緩和を目的とした「進行期・再発時の治療」に大きく分かれていること。薬物療法には「抗がん剤」「ホルモン療法」「分子標的治療(特に抗HER2療法)」があると説明しました。
抗がん剤の効き方につての説明では、がん細胞の性質についても分かりやすく説明し、抗がん剤はそうしたがん細胞の性質を利用して効果を発揮していると語りました。そのため、細胞分裂の盛んな部位に副作用が生じると話し、抗がん剤による白血球減少、貧血、血小板減少、脱毛、口内炎、下痢といった症状が現れる理由も分かりやすく紹介しました。
抗がん剤の種類、補助化学療法、特定の乳がんについての抗がん剤治療、補助化学療法は術前にするか術後にするか、といった専門的なお話しもあり、患者さんが納得して治療を受けられるよう、各種の調査研究成果をもとに、具体的な薬の使い方、選択について解説しました。
特に遺伝子発現プロファイルに基づく乳がん分類についても触れ、どういった乳がんに、どういった治療が有効であるのか、しっかりと学ぶことができる内容でした。
浅石理事長は「乳がん最新情報」として、日本人女性18万人を対象に追跡調査を行った国立がん研究センターの「肥満・閉経状況と乳がんのリスク」について触れ、BMIが大きくなると乳がんリスクは閉経前後ともに高くなる、特に閉経前ではBMIが30以上になると基準値の2.25倍になる、やせている方がリスクは低いが、栄養不足では免疫力の低下や脳卒中のリスクが増える、との結果を紹介し「日本人女性のBMIは21から25は望ましい」と食生活や生活習慣についてアドバイスしました。
この他、サンアントニオ乳がんシンポジウム2014から、ステージ1の早期乳がん手術・16646症例の調査結果を紹介。乳房切除術の五年生存率は90パーセント。乳房温存術では、温存手術のみが同87パーセント、温存術に放射線を加えたものが同96パーセントあり、温存術と放射線治療を併用した群の延命効果が乳房切除術よりも高かった、と調査結果を説明。
ステージ1の早期乳がんでER(+)例では、乳房温存療法の方が、乳房切除例より効果があり、放射線治療が延命効果の改善をもたらした可能性がある、と紹介しました。
HER2蛋白やがん細胞の仕組みを分かりやすく解説し、ハーセプチンの効き方、新しい抗HER2薬による薬物療法を紹介しました。クレオパトラ試験の追跡調査結果から、HER2陽性の転移性乳がんではハーセプチンにパージェタを加えた化学療法(タキソテール)の併用が、新しい治療選択肢として確立した、と最新の情報を盛りだくさんに解説しました。